第1話: ブログの魔法
ゆかりは、その白い画面を見つめながら、かつての情熱が灰に変わったことを感じていた。
彼女のブログ「ゆかりの色彩」は、一時は彼女の心の内を映し出すキャンバスだった。
しかし今、彼女は更新ボタンを押す手が止まり、
「もう、何を書けばいいのか…」
という疑問に苛まれていた。
そんな迷いの中、予期せぬ発見が彼女の心に新たな光を灯した。
晴れ渡る日曜日の朝、押し入れの奥から、懐かしいノートが現れた。
そのノートは、彼女がブログを始めたばかりの頃の日記で、
ページをめくるたびに、ゆかりの目はかつての輝きを取り戻していった。
初めての記事、初めてのコメント、そして初めてのフォロワーとの出会い。
それらの記憶は、彼女の心に再び情熱を呼び覚ました。
特に、おばあちゃんから教わった味噌汁のレシピを紹介した記事は、彼女にとって最も心に残るものだった。
「この味噌汁、おばあちゃんの愛が詰まってるんだよね…」
と、ゆかりは懐かしさに胸を満たされながら、久しぶりにその味噌汁を作ることに決めた。
野菜を切り、だしを取り、味噌を溶かす。
シンプルな作業の中で、彼女はかつての自分を見つけ、その日の夕食後、久しぶりにブログを更新した。
記事には、おばあちゃんの味噌汁のレシピと、その日に作った味噌汁の写真が添えられていた。
「これでいいのかな…」
と、思いながら投稿ボタンを押すと、彼女の心は軽くなった。
まるで、長い間閉じ込めていた何かが解放されたようだった。
翌朝、ゆかりのブログには数多くのコメントが寄せられ、
読者たちは彼女の味噌汁の話に共感し、温かい言葉を送っていた。
ゆかりは、
「ありがとう、おばあちゃん。そして、ありがとう、ブログ。」
と、心の中でつぶやきながら、新たな一歩を踏み出す勇気を得た。
彼女のブログの魔法は、まだまだ失われていなかったのだ。